・行政書士に合格したので独立開業を検討中!
・行政書士の独立後の情報が知りたい…
この記事は上記のように考えている人のための記事です。
独立後の業務内容や平均年収について、行政書士で独立することのメリット、独立するための手順と必要資金についてなどをまとめました。
この記事の目次
行政書士の仕事内容
行政書士として業務を行う場合、独立開業している人が圧倒的に多いです。
というのも、企業に雇われて行政書士の業務をすることは認められていないからです。
副業として活動している人もいますが、申請業務の相手となる役所・役場が平日の日中しか空いていないことが多く、土日祝日にしか申請手続きが出来ないため、サラリーマンの副業として活動するのも少し難しいのが行政書士です。
行政書士の独占業務の範囲
行政書士には、行政書士の資格がないと行えない「独占業務」というものがあります。
行政書士法第19条に、
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない
とあり、「官公署に提出する書類」「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」これらの書類は行政書士以外は作成できません。
「官公署に提出する書類」とは、役所に提出する許認可関係書類のことです。
飲食店営業許可申請書・建築業許可申請書・道路使用許可申請書などのことを指しています。
「権利義務に関する書類」とは、遺産分割協議書・各種契約書・示談書・協議書・嘆願書・念書・請願書などのことを指しています。
「事実証明に関する書類」とは、実施調査に基づく各種図面・各種議事録・申述書などのことを指しています。
「弁護士」「司法書士」と業務が被る部分も多い
実は行政書士の独占業務の中には行政書士以外の士業でも作成可能なものもあります。
弁護士は「権利義務に関する書類」の非紛争的契約書や協議書類を作成することができますし、司法書士なら外国人の帰化許可申請書を作成することができます。
また、基本的に行政書士は幅広い書類作成が可能ですが「他の法律で制限されるものについては業務を行うことができない」とも定められています。
税理士法で税理士の独占業務として定められている税務書類や、司法書士の独占業務である登記書類などは行政書士は作成できません。
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意外と広い行政書士の仕事
①自動車に関連する業務
②リサイクル関係の業務
③外国人の出入国や日本国籍取得に関する業務
④土地活用に関する業務
⑤著作権などの知的財産に関連する業務
⑥中小企業の支援に関する業務
行政書士は書類を作成するだけでなく、作成に関する相談に乗ったり、依頼者の代理で官公庁に提出することなどが行えます。
役所に異議を唱えられる「特定行政書士」
H27から行政書士が「行政不服申し立てに係る手続きの代理業務」が行えるようになりました。
ただ、すべての行政書士に認められているわけではありません。
上記の業務に携われるだめには、日本行政書士会連合会が実施する研修の課程を修了した行政書士だけが貰える称号である「特定行政書士」になる必要があります。
開業した行政書士の年収
行政書士の平均年収について統計調査が公式に行われたことはありませんが、開業した行政書士の年収は約600万円ほどだと言われています。
ただ、扱う業務によって単価が大きく変わるのが行政書士の業務です。
薬局開設許可のような単価が高い業務(1件120万円)を扱う行政書士は収入がたかくなる傾向にあります。
もちろんその分手続きは非常に煩雑ですし、薬局開設許可を必要としてる人に対して営業するスキルも求められます。
行政書士として年収を上げたいのなら、単価が高い業務の専門性を磨く必要がありますね。
また、行政書士が開業したからと言って必ず儲かるとは言えません。
開業にかかる費用が少ないというメリットはありますが、大切なのはどうやって顧客を確保して売上をあげるか?です。
残念ながら、独立して看板を出しておけば仕事が舞い込んでくる時代ではありません。
単価が高い業務を選ぶ・流行っていて需要がある業務を扱うことも稼ぐための1つのコツですが、競合相手(ライバルの行政書士)と差別化を行うことが最も大切です。
「○○を相談するなら△△さんだな」と評判になるくらい○○の分野で尖った差別化ができると仕事が舞い込んできます。
そのため、サラリーマン時代の業界に特化したり、別の資格も取得しダブルライセンスで専門性をアピールしている行政書士が多いです。
努力や工夫次第で年収に大きく差が出るのが行政書士ですね。
行政書士事務所に就職し実務経験を詰んでから独立開業するのは難しい
結論から言うと、行政書士事務所に就職してから独立するのは困難です。
というのも行政書士事務所の求人は非常に少ないからです。
リクナビネクストなどの転職サイトで検索してみると少なさを実感できると思います。
基本的に行政書士事務所は少数でまわしていることが多い(1人会社も多い)ので人員をあまり必要としてません。
また、行政書士は同業者と仕事を協力して行うことが少ないです。
いつか独立するであろう新人行政書士を育てるようなことをすると将来自分が苦しむことを皆分かっています。
中小企業診断士のような同業者と協業する資格だと新人を育てるということもあるようですが、残念ながら行政書士業界は新参者にやさしくありません。
このような理由から行政書士事務所で経験を詰んでから独立開業するというのはあまり現実的ではありません。
独立した行政書士は3年以内に8割が廃業
実は行政書士は8割以上が3年以内に廃業しているというデータがあります。
廃業率が高いのが行政書士として独立するデメリットですね。
ただ、行政書士は「公務員として17年(中卒者は20年)以上勤務」することでも取得することができます。
そのため、定年退職後に趣味で独立する本気度の低い人も多くいるので、一概に廃業率が非常に高いとは言い切れません。
また、行政書士に限らずですが、廃業理由の1位は売上を立てられないことです。
アテもなくいきなり開業すると売上を立てられず廃業する可能性は高いです。
異業種交流会に参加し経営者や仕事を紹介してくれそうな他士業とのコネクションを作っておくことは大切です。
「新しい場所に入り込み、仕事を取ってくるなんてハードルが高すぎる…」という人はWEB集客を勉強しておくのも良いでしょう。
SEO集客なら時間はかかりますが費用はほとんどかかりませんし、費用がかかるPPC集客もしっかり覚えれば非常に強力です。
また、SNSを使い発信することでコネクションを作ったり営業する方法もありますが、今はどの行政書士も行っているのでココでも差別化が必要になりますね。
行政書士として独立するメリット
行政書士は廃業率も高めで「食えない資格」と言われることもありますが、他ビジネスと比較してみると大失敗する確率が低いビジネスモデルだと言えます。
ここで言う大失敗とは、借金を抱えて廃業することを指します。
ここではその理由〇つをまとめました。
他業種に比べて必要な資金が非常に少ない(リスクが低い)
行政書士の独立開業は他のビジネスモデルと比べると必要な資金が非常に少ないです。
自宅を事務所にして始められるので、毎月支払う固定費がほぼ0で活動できます。
例えば、廃業率が特に高い飲食店だと「店舗の家賃」「従業員の人件費」など毎月の支出があります。
これら固定費は売上0円でも出ていくお金です。
さらに開業時に設備投資をするために多額の借金をしていることが大半です。
経営が上手くいかず廃業することになったら高確率で数百万~数千万の借金が残ります。
行政書士なら上手くいかないので借金が残らないので経済的なリスクは低いです。
もし廃業してもスタート地点に戻るだけなのでサラリーマンに戻ってリカバリーすることだって可能です。
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1つの仕事から派生して仕事が舞い込むのが行政書士
行政書士は顧客の信頼を得られれば派生して多くの仕事が舞い込む可能性が高いという特徴があります。
例えば行政書士の業務で高単価である「建設業許可」の依頼を貰った場合、顧客の多くは建設会社の社長です。
もしこの社長から信頼を得られれば、「廃業廃棄物運搬許可」「宅建業許可」のような申請が派生して必要になった際に声をかけてくれるでしょう。
また、社長の周りで同申請が必要になれば名前を出してくれるかもしれませんよね。
こういった理由から一度軌道に乗るとトントン拍子で成功するのが行政書士です。
行政書士として独立開業するための手順
行政書士として独立開業するためにはどのような準備が必要なのか?手順が分かるようにまとめました。
試験に合格する
当然の話ですが、まずは行政書士試験に合格する必要があります。
行政書士試験は毎年11月の第2日曜日に実施されます。
試験への申し込み手順などについては↓の記事をご覧ください。
ちなみに、弁護士や税理士といった資格を取得している人や、公務員としてある一定の期間勤務した人は行政書士試験免除で行政書士として登録できるといった試験免除制度も存在します。
日本行政書士連合会に登録
行政書士試験合格後に必要なのが日本行政書士会連合会への登録です。
まずはあなたが事務所を開きたい都道府県の行政書士会に入り、都道府県の行政書士会経由で日本行政書士連合会に登録することになります。
登録しなければ行政書士として活動することが認められません。
登録までの流れ
①開業する土地の行政書士会で「行政書士登録申請書」を受け取る
②事務所の写真を用意、必要事項を記入し申請
③審査(1~2カ月)
④日本行政書士連合会に登録される 入会完了
ちなみに手続きには諸費用がかります。
・入会金200,000円
・登録手数料25,000円
・東京都行政書士会・東京行政書士政治連盟会各会費3か月分21,000円
・登録免許税(収入印紙)30,000円
地域によって多少差異があるかもしれませんが東京の場合は276,000円が必要になります。
また登録以降、行政書士会へ毎月7,000円の会費支払いも発生します。
行政書士会から事務所調査を受ける
行政書士会に登録申請書類を提出すると事務所調査が行われます。
※中には事務所調査がない地域もあるようなので事前に確認してください
チェックされるポイント
①守秘義務を守れる事務所か
②行政書士として業務を遂行できる事務所か
これらについて行政書士会支部の役員が直々にチェックします。
ここをクリアしないと行政書士として登録できません。
具体的にコレが事務所にないとダメということは明文化されていないようです。
しかし守秘義務を守れる事務所だということをアピールするために鍵付きキャビネットまたは金庫を準備しておきましょう。
また、行政書士として業務を遂行できることをアピールするために法律書や本棚を設置するのも良いとされています。
机・椅子・電話・コピー機などの一般的な事務所にあるものについても、あるに越したことはないですが必須ではありません。
WEBを中心に業務をするつもりなら実務はパソコンだけで事足りますからね。
もし事務所調査で強く言及されるようなら「現在注文していてまだ届いていないだけ」と上手く避けるもの手です。
税務署に開業届を提出する
正式に行政書士として登録されたら税務署に開業届を提出しましょう。
開業届の正式名称は「個人の開業・廃業等届出書」で基本的に自分が住んでいる地区の税務署に提出します。
開業届は開業日の1か月以内に提出すると定められていますが、実際には多少遅くなっても多めにみてくれることが多いです。
税務署は脱税を最も嫌うので「開業届を提出=納税の意志あり」と受け取るのでしょう。
また「青色申告承認申請書」も提出することで青色申告特別控除(65万円)を受けられます。
少しでも支払う税金を減らすために申請をオススメします。
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得意領域を作るために価値のあるダブルライセンス
ダブルライセンスで行政書士以外の知識をつけることは営業上非常に有利になります。
専門性をつけ得意な領域を作ることで他の行政書士との差別化ができます。
また、他の士業の独占業務で収入を得ることもできるので、行政書士一本よりも収入が安定する傾向にあります。
宅建士
宅建士は主に不動産業界で役に立つ物件の売買や仲介の際に生きる資格です。
行政書士の業務には不動産の物件売買に関する書類の作成が多数含まれているので、被る部分も多く専門性を高めやすいです。
宅建士は年間300時間程度の勉強時間で取得できると言われており、ある程度手軽に差別化ができるコスパの良い資格です。
社労士(社会保険労務士)
社労士は採用から退職までの「労働や社会保険に関する問題」や「年金の相談」など多岐にわたる業務を専門としています。
多くの法律を網羅している行政書士とダブルライセンスとして取得すえば、それぞれの分野の法律知識を身に着けらるというメリットがあります。
中小企業診断士
中小企業診断士は中小企業の経営全般へのコンサルタント資格です。
行政書士とのダブルライセンスで、創業サポート~経営改善などのコンサルをするだけでなく、行政への許認可申請や契約書作成などもスムーズに行えます。
中小企業診断士は他の士業とチームを組みながら仕事をすることが多いですが、ダブルライセンスを活用すれば1人でトータルサポートすることもできます。
行政書士が独立・開業することは現実的なのか?必要な準備と手順まとめ
まとめ
①行政書士は独立開業が基本。ただ実務経験を詰んでからの開業は困難。
②平均年収600万円。廃業率は3年で8割。
③他士業とのダブルライセンスで差別化を図るべき。
独立開業はリスクと隣り合わせですが、だからこそ大きく稼げるかもしれないチャンスでもあります。
行政書士の開業に限らず、どんな業種であろうと大切なのは実行までの計画と準備です。
仮に失敗して廃業しても借金が残ることがまずない(低リスク)行政書士は魅力的な業種だとも言えるでしょう。
行政書士は低リスクで開業にチャレンジしたい!という人にオススメできる士業ですね。
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